日本最古のリゾートホテルをルーツとする同グループは、オールインクルーシブ、スモールラグジュアリーなど、多様化するニーズをとらえたホテル運営や、都内のレストラン事業、物販・EC事業などを展開する企業。新型コロナウイルス感染拡大を受け、驚くべきスピードでデジタル化を推進した取り組みを伺いました。

取締役 財務・事業戦略部長
関 兵蔵 さま(写真右)
営業部 予約企画 課長
吉成 伸博 さま(写真左)
営業部 予約企画 主任
松本 峻 さま(写真中央)

新型コロナウイルス災禍を機に、
グループ全体のDXを一気に加速

新型コロナウイルスのパンデミックが発生した2020年。同社ではその数年前からSalesforceの導入を始めとしたDXへの取り組みを模索していました。

「法人顧客から個人顧客へのシフトや、OTA(Online Trabel Agent:旅行サイトなど)依存から脱却するための直販化を目指さなければならないことは分かっていました。しかし、足下の業績が好調だったという甘えがあり、積極的に取り組めていませんでした。」同社取締役の関さまは、当時をこう振り返ります。

4月に緊急事態宣言の発令、ゴールデンウィークは営業が完全にストップし、未曾有の危機で待ったなしの状況。7月に法人営業主体の東京営業所を閉鎖、8月にSalesforce導入、9月にはMarketing Cloud Account Engagementによるデジタルマーケティングが始動と、わずか数カ月で体制を整えました。これ以外にも、購買管理、給与管理、人災評価・人材管理、AIチャットボットなど、2年あまりの期間に10近くのITシステムを一気に導入したといいます。

「使いこなす自信がない、適切な人材が不足しているなど、判断を先伸ばしにする理由はいくらでも出てきます。停滞・減速しか見えない先送りに意味はなく、導入前に何の準備ができるわけもない。そう考え、Account Engagementの契約書にサインを行いました。結果が出せないなら、契約を解除すればいいだけですから。」(関さま)
社内にIT専門の部門は存在しませんでしたが、デジタルに強い若手主導で、約10人からなる推進プロジェクトチームが発足しました。

導入の狙い

●事業ごとに分散された顧客データを統合し、ひとつのブランド体験を提供。
●データやファクトに基づき、パーソナライズされたサービスを提供する。
●自社獲得予約や、若年層の取り込みなど、新しいセグメントへのアプローチを図る。


紙ベースの郵送DMから、メールマーケティングに。
情報配信頻度は5倍に増加。

「当社の基幹システムには、すべての顧客データが存在していたものの、事業や部門ごとにそれぞれ独自のルールで活用していました。これらの分散されたデータを統合し、Account Engagementを活用することで、ひとつのブランド体験を提供することを目指しました。」(吉成さま)

紙ベースの郵送DMを半減することで、コストも半減させ、メルマガの発行を3倍に増やしたといいます。SNSを含めると5倍の情報配信頻度となります。
「Account Engagement導入以前は、行動履歴や嗜好などお客さまの精査が不十分のままに一斉にDMを送り、〝効果があった/なかった〟何となくの肌感覚による検証しかできませんでした。現在は、プロスペクトがサイトをどのように閲覧していたのか、どのセグメントが、どのタイミングでコンバージョンに至ったのかという詳細な情報が日々蓄積されています。」(松本さま)

活用を重ねるごとに、「お客さま一人ひとりの意向に寄り添うかたち」で、ターゲットを絞った商品やプランのご案内ができるようになると期待されているようです。


事業横断のマーケティング施策を展開。
ECサイトへのクロスセルで売上増加。

東京恵比寿にある「JOHN KANAYA」は、チョコレートをメイン商品とするギフトショップで、実店舗のほかにEC販売も行っています。
https://johnkanaya.jp/
2月のバレンタインが売上の核となり、数多くのデパートの催事にも出店しますが、限定商品は他の季節には販売できず廃棄になることもありました。
そんな販売ロスをなくすため、催事後に限定商品の詰め合わせをEmailで告知し、全てを完売することができました。通常は割引販売のないブランド商品をシークレット販売することで、リピーターの特別感・お得感とともに、食品の廃棄ロスを防ぐことにも繋がりました。
「宿泊リピーターへ紙のDMを郵送した際には、2カ月後にEmailを送信するなど、紙のDMとEmailのDMを効果的に併用することで、宿の魅力を伝えられていると実感しています。今後はグループの会員制度「倶楽部金谷メンバーズ」との連携を強化し、宿の魅力に加え、有益・お得な情報をお客さまに届けていきたいと考えています。」(関さま)

導入効果

●郵送DMを半減し(コストも半減)、メルマガ発行は3倍に増加。
●事業や部門ごとに分散していた顧客データを統合。
●ECサイトへのクロスセルで売上が増加。

この事例記事は、2022年12月時点の情報となります。